※抗原検査キットとは:体内に特定の抗原があるかどうかを調べる検査キットです。
発熱やせきなどの風邪のような症状が出たときに、自宅で簡単に短時間で検査できます。
1.「抗原検査キットの無料配布」の目的
コロナ渦は、世界保健機関(WHO)によると、約3年3か月の期間に及びました。その間、ワークログ株式会社代表の山本は、神奈川県の新型コロナウイルス感染症対策本部で支援を続けていました。(支援までの経過:これまでの記事を参照してください。)
2022年には、新型コロナウイルスの「オミクロン株」の感染が猛威をふるっていました。
そこで、神奈川県(以下、「県」という)では、2022年8月「医療機関のひっ迫状況」外来受診のひっ迫を軽減するため、重症化リスクの低い方を対象とした、抗原検査キットの無料配布を実施することになりました。
抗原検査キットとは、体内に特定の抗原があるかどうかを調べる検査キットです。発熱やせきなどの風邪のような症状が出たときに、自宅で簡単に短時間で検査することができます。
次のフローにあるように、発熱外来のひっ迫軽減を目的にスタートしました。

当事業のシステムも、これまでの「神奈川モデル(過去の記事を参照してください)」の一環で開発されたシステムと同様に、神奈川県と弊社代表山本で準備しています。
2「抗原検査キット」を活用する流れ
(1)申し込みまで

(2)抗原検査キット配布機関検索ページを確認(在庫状況も可視化できます)
(3)抗原検査キッドの結果は、次の流れで結果を県に届け出ます。なお、陽性時は、前項で紹介した「自主療養の届け出システム」などをご活用いただきます。

3.公開後、アクセスが殺到し「即、終了」。当時のTwitterでは……
県では、次の対策をとって、順次対応する準備をしておりました。
・1日当たりの上限を設ける。
・1分あたり500アクセスまで上げてもらう。
(フォームブリッジを提供なさっているトヨクモ株式会社の協力)
しかし、メディアの報道もあり、922万人もの県民を抱える神奈川県ですが、公開後、即座に「アクセスが集中しています」という画面」が表示され、当時のTwitter(現X)では、「神奈川県は配布する気があるのか!」という投稿もありました。
山本が当時のことを振り返ったことを語ってくれました。
「実は、この抗原検査キットですね。先ほどもお話がありましたが、正直リリースする前も、県の皆さんに『本当にこれをフォームブリッジでやるんですか? kintoneでやるんですか?』と散々確認しました。
というのも、当時、本来、kintoneで構築する場合、登録は分間60回までというの技術的な制限があり、その上限値を超えてエラーが出ても通知がないので、私のような外部の立場からは、ちょっと提案しづらいというのが正直なところでした」
4.システム提供開始までの心境
当時の心境を、弊社代表の山本に、矢継ぎ早にいくつか、聞いてみました。
Q1 「抗原検査キットの無料配布」を始めるとなったとき、どういう心境でしたか
ただ、やはり難しかったのは、この抗原検査キットですね。先ほどもお話がありましたが、正直リリースする前も、「本当にこれをフォームブリッジでやるんですか? kintoneでやるんですか?」と散々確認しました。(これまでにも、会場に笑いが起こった点)
でも、それ以外に手段がなかったんですよね。それで、数に限りがある抗原検査キットに対して、約922万人の県民の方が一斉にアクセスしたんですね。これはみなさんも予想できるのではないかと思いますが、アクセス数でかなり課題がありました。
Q3「稼働時に感じたことは?」
神奈川県では、1日の配布個数を限定していました。それを922万人の県民が取り合うわけですから、初日はあっという間に配布が終了しました。ほんとに1分ももたないです。一瞬でした。
フォームブリッジで回答数を制限していましたが、それでも制御できずに配布個数を越えた回答があったことを覚えています。
受け取れなかった県民の不満が爆発してXが荒れていましたね。それだけ抗原検査キットに期待が集まっていたのだと思います。ただし、受け取りの窓口は薬局等に制限してましたから、そこに殺到されても感染拡大に繋がってしまいます。システムを通じてその施策の意図まで伝えるのは難しいなと思いましたね。
Q4 一連の取り組みは自分自身にとって何になりましたか
kintoneは大量のデータを扱うことには不向きだと思っています。アプリに登録できるレコードの件数に仕様上制限はありませんが、数十万件のレコードは一覧を読み込むにも時間がかかり、現実的ではありません。
我々開発事業者は、そのリスクを正しくクライアントに伝え、リスクをしっかり理解した上で運用して頂くことが大事だと思います。とはいえ、最近は、kinotneにも「ワイドコース」がリリースされ、大企業への拡販にも力を入れているように思いますし、大量のデータを扱えるように機能拡張されることも期待したいですね。
<了>
小池
< ワークログ株式会社とは>
『テクノロジーでアソボウ』をビジョンに掲げ、個人が持つ知見・強みを活かし、企業のシステム開発や事業企画を支援。システム開発においては、上流工程から参画しビジネス面を考慮しながら行う提案型の要件定義が特徴です。
スピードが求められる場面においては特に定評があり、自治体、大学、不動産業界、人材ビジネス業界など、短期間で成果を出す「本当に意味のあるシステム開発」を求める様々な業界から絶大な評価を受けている。
2020年3月より、神奈川県新型コロナウイルス感染症対策本部の企画・開発に参画し、感染防止対策取組書・LINEコロナお知らせシステム、発熱等診療予約システムなど、数々のシステムを公開しています。
代表の山本は2023年7月より神奈川県のDX推進アドバイザーに就任。今後はさらに幅広い業界のDX推進を目指します。