1.「診断書」をもらうための受診が、医療機関の負担を増やした
コロナ禍は、世界保健機関(WHO)によると、約3年3か月の期間に及び、人々も疲労の極地でした。その間、ワークログ株式会社代表の山本は、神奈川県の新型コロナウイルス感染症対策本部で支援を続けていました。
2022年1月、コロナ禍がはじまって2年後、新たに、新型コロナウイルスの「オミクロン株」の感染が大きく広がりはじめます。「オミクロン株」は、若い方や基礎疾患のない方は重症化のリスクが低いことが分かってきました。しかし、高齢者は、重症化リスクが高い傾向があり、高齢者を中心に感染が徐々に広がっていきます。
医療従事者は、限られた医療資源を、よりリスクの高い方たちへ重点的に提供する必要に迫られていきます。
2.感染拡大を防ぐ「自主療養届出システムの仕組み
感染拡大は「医療機関のひっ迫状況」として報道されることも多かったと思います。
実際は、8割から9割の方が軽症です。移動しないでいただくことこそ、感染を拡大させないで済みます。
ひっ迫させた要因の一つが、会社員が休む際に必要な「療養休暇のための医師の『診断書』をもらうための通院です。「証明」のために、医療機関を訪れる人も増えていきました。
当時のように、証明のために受診せざるを得ない体制では、医療機関のひっ迫状況を悪化させてしまいます。また、患者さんご本人にとっても、体調が悪い中、医療機関の行列に並ぶのは、体への負担が増えますし、とはいえ、出社すると、感染が拡大してしまいます。
そこで、神奈川県では、「重症化リスクの低い方で抗原検査キットや無料検査で陽性が判明した場合」は、医療機関の診断を待たずに自ら療養を始められる仕組みを計画します。
それが、療養開始を示す書類を発行してもらえ、簡易証明の役目を果たす「自主療養届出システム」です。法的な課題をクリアし、全国に先駆けてのスタートでした。同システムも、kintoneを用いて、弊社で開発いたしました。
さらに、毎日の「健康観察」をAIコール(問い合わせやコミュニケーション、タスクをAIがを担うコールセンター)により、療養生活を補助してもらうことができました。
患者さんには、同システムを利用いただければ、病院で診断書をもらいにいかずとも、ご家庭にいて、会社などの集団から隔離いただくことができます。
なお、システム構築という側面では、既存システムとの連携という面では、LINEサポート、Aiコールlや多職種連携システムTeaTeamとの連携を構築しました。併せて、業務負担軽減のためにRPA(※)も活用しました。
※ RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは、パソコン上で人が行う業務を自動化できるソフトウェアロボット技術です。
他にも、医療機関で陽性判断を受けた方を対象とし、療養のための問診票としてのウェブフォームも提供しておりましたので、これらの仕組みにも影響がないよう、システム設計を行ないました。
<自主療養届>

<システムを活用する流れ>
(1)入力フォームから、抗原検査薬キッドの結果をスマホで撮影し添付して送ってもらいます。所要時間は、約1分の簡単申込みです。

(2)上記のフォームからいただいた情報をもとに、県職員が内容の確認を行います。
なお、職員用の管理画面は、確認が容易です。その上で、管理画面からも自主療養届の発行やメールの一斉送信が可能です。

3.システム提供開始までの心境
さて、当時の心境を、弊社代表の山本に聞いてみました。
「このシステムは、当時、賛否がありました。病院に行かずとも自身の判断で自宅での療養ができるわけですから、医療機関にとっては業務のひっ迫を減らすことに繋がります。
一方で、県民の皆様からすると、『医師の診断なしに自宅で療養し、何かあったらどうするんだ』と心配する声があったのも事実です。
既に、ほぼ亡くなることがない病気として認知されていました。でも、もちろん、ゼロではありません。高齢者や基礎疾患がある方は、重症化リスクもあります。懸念の声も当然です。
そのため、重症化リスクを判定する論理を組んだり、自宅療養者を対象に日々の健康チェックを行う仕組みを入れたり、最悪のケースを想定し必要に応じて救急搬送できるよう、検討に検討を重ねてリリースに踏み切りました」とのことです。
その後、「神奈川県での官民の連携体制」は、能登半島地震や奥能登豪雨に活かされていきました。ぜひ、両事例もご覧ください。
<了>
小池
< ワークログ株式会社とは>
『テクノロジーでアソボウ』をビジョンに掲げ、個人が持つ知見・強みを活かし、企業のシステム開発や事業企画を支援。システム開発においては、上流工程から参画しビジネス面を考慮しながら行う提案型の要件定義が特徴です。
スピードが求められる場面においては特に定評があり、自治体、大学、不動産業界、人材ビジネス業界など、短期間で成果を出す「本当に意味のあるシステム開発」を求める様々な業界から絶大な評価を受けている。
2020年3月より、神奈川県新型コロナウイルス感染症対策本部の企画・開発に参画し、感染防止対策取組書・LINEコロナお知らせシステム、発熱等診療予約システムなど、数々のシステムをリリースしています。
代表の山本は2023年7月より神奈川県のDX推進アドバイザーに就任。今後はさらに幅広い業界のDX推進を目指します。
商号:ワークログ株式会社
代表者:代表取締役 山本 純平
本社所在地:〒102-0073 東京都千代田区九段北1-2-2 グランドメゾン九段805
設立:2019年6月
事業内容:IT・コンサルティング