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能登半島地震から9か月後に起きた「奥能登豪雨」での支援

2025.4.7
Keiko Koike

ワークログ株式会社(以下「弊社」という)は、奥能登豪雨の被災地に入り、健康アセスメント(※1)をkintoneで作成しました。

※1健康アセスメントとは

個人の健康状態を身体的、精神的、社会的な側面から総合的な評価すること。

はじめに「被害状況」について

奥能登豪雨では、2024年9月20日から23日までの豪雨による甚大な被害をうけました。

石川県内では、七尾市、輪島市、涼し、内灘町、志賀町、穴水町、能都町が主に被災しました。死者は14 名と、多くの尊い命が失われました。改めて、哀悼の意を表します。

豪雨から1か月後の調査では、避難者数は、輪島市が406人、珠洲市が55人、能登町7人と合計468名になりました。同年1月1日に発災した能登半島大地震の被災者もほかにいる状況でした。同じ年のうちに、2つもの災害が石川県を襲いました。
(「石川県 令和6年奥能登豪雨による被害等の状況について(危機管理監室)」より引用)

1.能登地震での「官民連携による被災地支援体制」

同年1月1日に発生した能登地震では、災害時の救援活動において、行政と民間企業が連携し取り組んだ事例となりました。行政と民間企業の連携体制を、広く社会で活用していくために、防災DX官民共創協議会(略称「BDX」という。)という組織があります。

例えば、災害時に急行して行われる救援活動と言えば、自衛隊、消防、警察、医療関係、地元自治体が中心です。

しかし、災害支援の分野によっては、民間企業が力になれる分野があります。

 例として、次の内容が挙げられます。

(1)平時:防災教育、災害リスクの確認

(2)切迫時・避難行動:避難促進、被災予測・計測、情報収集

(3)応急時・避難生活:避難所運営、物資提供、被害情報の収集・共有

(4)復旧・復興:生活再建支援

(防災DX官民競争協議会のサイトからの引用)

弊社は、能登地震以降、BDXやサイボウズ災害支援パートナー(※2)に参加しています。

※2 サイボウズ災害支援パートナー

災害支援を迅速に行えるように、平時から準備や連絡体制の整備をしている、サイボウズ株式会社のパートナー企業等。

奥能登豪雨の発生を受け、弊社はBDXの一員として、またサイボウズ災害支援パートナーとして、奥能登豪雨の被災地に入りましたので、今回は被災者の健康アセスメントの支援などを報告いたします。

2.再び、被災地に着いて

弊社代表の山本は、同年1月1日に発生した能登地震でも、被災地入りし支援に取り組んでいました。(前項をご参照ください。)

同年中に再び、能登半島を訪れた山本に、再訪のときの心境を尋ねました。

「能登半島地震の支援で現地を訪問してからしばらく経過していましたが、本当に復興が一度リセットされたような感覚になりました。

現地を訪れたのは豪雨から数日後でしたが、河川は泥で茶色く濁っており、いたるところで山肌が見え、いつ土砂崩れが起きてもおかしくない状況でした。

水道が止まっている地域もあり、「街中の泥水を、泥水で洗っていた」という話も聞きました。

健康アセスメントは能登の町役場で受付をしました。

町役場自体も、土台はせり上がり、周りにはまだ泥が残っているような状況で、もはや地震の被害なのか、豪雨の影響なのか、わからなかったです。

……とはいえ私は被災者ではないですから。あまり感情に浸っている場合じゃないというか、我々のように支援に来たメンバーが気落ちしてしまうのではなく、『自分たちはやるべきことをやる』と気持ちを切り替えて現場にいた記憶があります」とのことでした。

では、さっそく、具体的な被災者の健康アセスメントのシステムをご紹介します。

3.マイナンバーカードと連携した「被災者の健康アセスメント」

提供したのは、健康アセスメントのシステムです。

当システムの対象は、能登半島地震以降に暮らしていた避難所や仮設住宅が、今回の豪雨の被害に遭い、さらに、被災地外への一時的な避難としての「二次避難所」への避難を希望する方が対象です。

ですので、二次避難所の申請窓口を輪島市、珠洲市、能登町などの市役所に設置し、その受付時にアセスメントを行うものでした。また、そのアセスメント情報は関係各所に共有され、その情報をもとに二次避難所を指定していました。

今回もkintoneを活用しましたが、デジタル庁と連携し「マイナンバーカードとの連携機能」を実装させました。

マイナンバーカードとの連携で、カードから「氏名・性別・生年月日・住所」を読み取り、「本人確認」と「情報登録」を一度に行えます。基本情報をふまえ、速やかに被災状況や健康状況の聞き取りに移れて、クラウド上のシステムに入力するというオペレーションが可能になりました。

奥能登豪雨 輪島市 2次避難受付システム
奥能登豪雨 輪島市 2次避難受付システム

4.システムを使ってもらう姿を目の前にして

改めて、山本に「システムを使ってもらう姿を目の当たりにして、どう感じたか」と尋ねました。

「避難所や仮設住宅が水害に遭った方を対象に、二次避難所への案内をするための仕組みでしたが、思っていたよりも二次避難所への希望者が少なかったことが印象的でした。

『地元を離れたくない』もしくは『とある事情で離れられなかった』という方が多かったと聞いています。最適な施策を実施する難しさを感じました。

また、防災の分野で初めてマイナンバーカードと連携した仕組みを構築し運用しました。

氏名や住所を単に入力しただけでは、漢字の表記に揺らぎがあり、他の情報との紐づけが困難になることがあるので、「マイナンバーカード」から基本情報を取得することで、名寄を効率よくすることが必要でした。

能登半島地震では、こういった個人の認証の仕組みがなかったので、関係各所で取得したデータの「名寄せ」も、課題が浮かび上がりました。例えば、『氏名』は旧字体の影響があり、『住所』も表記が異なるので名寄せができず、『この鈴木一郎さんとこの鈴木一郎さんは別人なんだろうか』と、現場の混乱を招きました。

さらに、スタートしてみると『マイナンバーカードを持ち歩いている方の多さ』も実感しました。

災害は起こってほしくないですが、災害支援の場では、支援者側がシステムを開発するときには、マイナンバーカードと防災のシステムを簡単に連携できるようにすれば『どこに、誰が避難して、何の支援を受けているのか』という情報を追跡し、記録することが円滑になります。

その際は、デジタル認証アプリなども活用し、ぜひこの仕組みを支援のベースにしていただきたいと思っています」

5.支援で連携した医師の山崎元靖さんから

能登の2つの災害は、被災者支援の協力体制を強くさせました。1月の能登半島地震のときよりスムーズに業務を進められました。これは、BDXの一員としても、サイボウズ災害支援パートナーの一員としても、現場で信頼関係を深められたからです。

被災者支援で連携した医師の山崎元靖さんは、山本によるデジタル支援に対して、次のように語ってくれています。

「山本さんとは石川県庁のDMAT本部で、高齢者支援活動でご一緒した時の印象が強く残っています。課題が発生したそばからあっという間に、デジタルを駆使して解決していくようすを間近に見てきました。(ただし、デジタル人材がいれば解決できるものではありません。)医療人材とデジタル人材が、現場で一緒に、リアルタイムに災害に対峙することが圧倒的に重要だと痛感しました。これからの災害医療活動にとてもおおきなものを示唆してくれていると思います」

倒れかかる電柱
倒れかかる電柱
生活再建と二次避難の受付
生活再建と二次避難の受付

<了>

小池

< ワークログ株式会社とは>

『テクノロジーでアソボウ』をビジョンに掲げ、個人が持つ知見・強みを活かし、企業のシステム開発や事業企画を支援。システム開発においては、上流工程から参画しビジネス面を考慮しながら行う提案型の要件定義が特徴です。
スピードが求められる場面においては特に定評があり、自治体、大学、不動産業界、人材ビジネス業界など、短期間で成果を出す「本当に意味のあるシステム開発」を求める様々な業界から絶大な評価を受けている。

2020年3月より、神奈川県新型コロナウイルス感染症対策本部の企画・開発に参画し、感染防止対策取組書・LINEコロナお知らせシステム、発熱等診療予約システムなど、数々のシステムをリリースしています。
代表の山本は2023年7月より神奈川県のDX推進アドバイザーに就任。今後はさらに幅広い業界のDX推進を目指します。

商号:ワークログ株式会社
代表者:代表取締役 山本 純平
本社所在地:〒102-0073 東京都千代田区九段北1-2-2 グランドメゾン九段805
設立:2019年6月
事業内容:IT・コンサルティング
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