どうでもいい話題も、図にすればなぜか深く見えてくる。
この番組は頭の体操、時々悪ノリ。見えるようで見えない構造をスッキリ整理する、そんな図解系ラジオです。
小3の娘が「Tシャツデザイナーになりたい」と言い出した。父は即座にiPad miniを買い、制作環境を整える。完璧な支援体制、だが肝心の本人は「気分が乗らない」。
そこから始まる、夢と教育とビジネスのすれ違い漫談である。
小3の夢は“プロTシャツ家”





子どもに「将来何になりたい?」と聞くのは、地雷である。
親はだいたい“なんでも応援するよ”と笑顔で言うが、内心では「医者」「弁護士」「データサイエンティスト」あたりを期待している。
そんな中、山本家の娘(小3)が言い放った。「Tシャツデザイナーになりたい」。
想定外のクリエイティブ職である。
とはいえ、夢を応援しない理由はない。父は即座に“エンジェル投資家モード”に突入し、iPad miniを購入。「これが最初の投資だ」とドヤ顔。Adobe Frescoをインストールし、ユニクロのカスタムTシャツサービスと連携。
完璧なクリエイティブ環境が整った。あとは娘が描くだけ――だった。
だが現実は甘くない。
宿題、ピアノ、バイオリン、YouTube、そして「気分が乗らない」。
どの理由も、ベンチャー企業のプロジェクト延期と同じくらい強力だ。
「描いてよ」と言えば、一瞬で“仕事の発注”になる。もはや親はクライアント。娘は受託業者。納期は無限延期。
「子どもの自由を尊重する」と「成果を出してほしい」は共存しない。
だから結論はひとつ。環境は整える、指示はしない、口は出さない。
創作とは、気まぐれを待つスポーツなのだ。
「上手くなる」と、面白くなくなる悲劇

二宮いわく、「絵は上手くなった瞬間、つまらなくなる」。
これはアート版“青春の終わり”である。
子ども特有の大胆な色づかいや、線の迷いがなくなる瞬間、創造性は“上達”という名の標準化に呑み込まれていく。
大人は「上手く描けたね」と褒めながら、実は“平均に近づいたね”と言っているのだ。
恐ろしい。
山本はそれを本能的に避けていた。「綺麗な絵なんて描かなくていい」と。
彼が好きなのは“木工用ボンドで絵を描くボンドさん”。
つまり、概念とか解釈とか、そういう“ややこしい大人アート”が好きなタイプ。
でも小3に「元気が出る絵を描いて」と言っても、通じない。
「元気って、どの色?」と聞かれて詰む。
子どもの絵は、指導した瞬間に消える。
雑でも不思議でも、そこに“その子らしさ”がある。
教育とは、整えることではなく“崩さないこと”。
正解を教えるほど、彼らは正解しか描かなくなる。
芸術教育の最難関は、手を出さないことだ。
(※ちなみに親が口を出した瞬間、AIが生成したようなつまらない構図になる)
デザイナーは「おしゃれ職」ではなく「戦闘職」

「デザイナーっておしゃれだよね」と言われた時点で、その人はまだ“デザインの入口”にも立っていない。
デザイナーとは、実は経済の現場に立つ戦士である。
美術よりも必要なのは、論理力・分析力・提案力・営業力・胆力。つまり、“主要5科目の総合点が高い人”。
二宮は言う。「画力?いらないです。論理があればいい」。
デザインとは感性でなく、構造である。
「なぜこの色か」「なぜこの線幅か」をロジカルに説明できる人が、“プロ”。
Tシャツ1枚を作るにも、ターゲット・販路・価格設定・ストーリーテリングまで設計する。
それが“売れるデザイン”だ。
山本は悟る。「つまり娘が描いたTシャツが売れないのは…経営の問題?」
二宮:「はい。ブランディングとマーケティングです」
まさかのMBA展開である。
小3の夢を通して語られる“経営論”。
「夢を応援する父」から「事業計画を練るプロデューサー」へ、肩書きが変わった瞬間だった。
二宮からのアドバイスを受け、早速オンラインのTシャツショップ「ゆづき屋」を開設。これからアイテムが追加されていくことを期待したい。
ブランディングが重要なのはデザイナーだけではない?

ブランディングが重要なのはデザイナーに限ったことなのか?
ふと、ポッドキャストを振り返り考えてみる。
例えば、エンジニアという職種はどうだろうか。近年、エンジニアは比較的オンラインでも働きやすいことからフリーランスや個人事業主での働き方を選択する人も増えている。
一方で、組織から一歩外に出た時に、個人で仕事を受けることは決して容易ではない。
クラウドソーシングサービスを展開するランサーズの調査によると、登録しているフリーランスの7割は年間の報酬が100万以下であるという。この年収では独立し個人の仕事だけで生活をすることは難しい。
これからは100年時代と言われ、70代になっても仕事を継続することが当たり前になってくることを考えると、1つの組織に依存するよりも生活スタイルに合わせて働き方も柔軟に変えられることが好ましい。
そのためには、デザイナーやエンジニアに限らず、個人の実績やスキルを見える化し公開するような”個人のブランディング活動”をし、組織内・外を問わず個人を認知してもらい、個人指名での依頼が安定して来るような状態を目指すべきだ。
小3の娘の成長の話から、”カオス整備屋”山本純平のブランディング活動をすべきだと示唆を得て、身が引き締まるポッドキャストであった。
