新型コロナウイルス感染症による医療崩壊を防ぐ「神奈川モデル」では、中等症・重症患者を診る医療機関を選別し、医療リソースを集約する方針でした。
しかし、近日の陽性者数の増加に伴い、中等症・重症患者の容態が回復した後に、別の医療機関に搬送する(いわゆる、下り搬送)件数を増やさなければ、受入れが難しいという状況になりつつありました。
それに伴い、2021年1月26日、神奈川県は下記の通り病床の回転を上げる方針について記者発表で述べました。
新型コロナウイルス感染症が軽快したものの引き続き入院が必要な患者の転院を円滑に進め、同感染症患者に対応する病床を有効に活用していくため、「後方搬送」の神奈川モデルを構築しました。(神奈川県「新型コロナウイルス感染症「後方搬送」の神奈川モデルについて」)
そこで、下りの搬送調整の業務が効率よくできるよう、kintoneを活用した情報共有基盤を構築しました。
下りの搬送調整業務の流れは?
そもそも搬送調整って、病院間でやるものでしょ?と思うのですが、陽性者が増えて病床も逼迫している状況のため、どの病院に空きがあるのかわからないという課題がありました。
また、近隣の病院であれば情報共有することも多いようですが、少し離れた場所の病院だと、どのような患者を受け入れられるのかがわからず、結果搬送調整に時間がかかる、故に搬送を諦める、ということが起きているようでした。
そこで主な機能としては、
- 受入可能な病床数・患者の条件を共有できること
- 搬送したい患者の情報を共有できること(個人情報は除く)
- 搬送調整のステータスを管理できること
が求められました。
下り搬送調整アプリの全体設計(kintone)
しばらくは県庁職員が調整役を担う方針となり、
- 患者の基礎情報を扱う「搬送調整依頼アプリ」
- 受入可能な医療機関を検索する「受入可能病床管理アプリ」
- 医療機関のマスターデータとなる「下り搬送に係る調査アプリ」
という3つのアプリを作成しました。
搬送調整依頼アプリ
本アプリで、搬送したい患者の情報を登録し、病院・県職員と共有します。
この情報をもとに、県の職員が受入可能な病院を探すことになりますが、セキュリティの観点から個人情報は管理しない設計としています。
受入可能病床管理アプリ
患者情報を見ながら、受入可能な医療機関を検索します。
事前に医療機関に対して調査をした結果を参照でき、受入可能な患者の条件(診療科、入院期間、精神疾患の有無など)で絞り込みを行い、検索結果を地図上(Google Map APIを利用)で確認できます。
情報基盤構築の効果は?
そもそもExcelで管理しようとしたいものが、アプリで管理・調整できるようになったことで、県庁内部の調整業務の効率化を実現することができました。
本仕組みについて、毎日新聞の取材によりますと、
(前略)新型コロナにかかわらず転院先を探すのは通常であれば1日以上かかるというが、後方搬送では9割以上が平均2時間半程度で見つかるという。
横浜労災病院救命救急センター救急災害医療部長で同室搬送調整班の中森知毅医師は「それぞれの医療機関が協力してくれたからこそ、余裕のある状態が生まれつつある」とする一方、「医療従事者は疲労やストレスを抱えたままだ。一日も早く収束させられるように、県民には感染予防を徹底してほしい」と要望した。
とのことで、効果が得られているようです。
コロナ禍を支える部隊として、今後もDX化の活動を支援していきます!